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植田博明の情熱コラム

植田博明の情熱コラム「グローバル・リーダーの資質②」

前回グローバル時代の特徴として国家の壁を超えた諸活動が自由になされている時代と述べました。今回は第二の特徴として国家の壁を超えた交流が盛んになればなるほど、世界各地の様々な文化と遭遇する機会が多くなる中、多様な文化の価値を尊重するという立場から、「多様性(diversity:ダイバーシティ)の尊重)という概念が広範に拡がりつつあります。ここで「多様性の尊重」という考え方を「個性と普遍性」という角度から吟味してみたいと思います。

そのためにまず有名な大著「歴史の研究」を著したA・トインビー(1889~1975)による視点を紹介します。彼は歴史研究にあたって既存の研究者がするように国家という単位ではなく、文明というより大きな単位で歴史を見るべきであると考えました。彼は、文明とは「国家より大きく、全世界より小さい、中間的大きさの社会の単位」と規定し、その観点から人類歴史の始まりから現代に至るまでの壮大な歴史論を展開しました。文明の興亡盛衰のプロセスを研究したトインビーによれば、人類は今日まで20から30の文明を誕生させ、互いに時間的、空間的に接触しながら歴史が推移する中で、多くの文明は消えさり、今日では、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、儒教(などの極東宗教)をベースとする4大文明のみが、存続しています。それらの文明は,誕生→成長→衰弱→解体→“世界国家”(Universal State)と“世界教会”(Universal  Church)という法則に沿って、変遷してきました。更に、諸文明に濃淡の差はあるものの、その核心部分において宗教の果たした役割が大きいことを指摘したのです。

このようなトインビーの研究成果を参考にして、今日、日本の企業のトップセミナーで、最も人気のある講師の一人、社会学者の橋爪大三郎氏は、現代世界には、各々10億から25億人を擁する四つの文明が存在し、そのベースに、先ほど紹介した世界宗教があることを指摘し、それらが文明という、まとまりを形成する為に果たしてきた役割について、明快に述べておられます。

確かに、9.11同時多発テロは世界に大きな衝撃を与えました。グローバル世界は理解できない他者、理解を超えた他者からなる多様な世界であると多くの人が感じたと思います。しかし、何故、トインビー博士が言うように、古来から人類が多くの文明を形成してきたにもかかわらず、今日「高度宗教」をベースとした四大文明に収斂されつつあるのかという問いに対して、橋爪氏は世界宗教と言われる四つの宗教が、それ以前に存在したより小さな集団で日常化していた互いに異なった習慣や規範の壁を打ち破る、より高次元の共通の、普遍的教えを提供した結果、文明というより大きなまとまりを形成することが出来たと述べています。つまり、もし宗教が無かったら人類の歴史はもっと多くの悲惨な戦争・紛争に見舞われたに違い無いということです。つまり、異なると思われてきた諸々の宗教、特に先ほど紹介したような「高度宗教」には、「愛天・敬天」、「愛人」、「愛地」など、表現することばは、違っても同様のことを言っている教えが実に多いと、言われています。

結論としてグローバル時代において、「多様性の尊重」という言葉に含意される「個性の尊重」という考え方は、確かに大切ですが、前回冒頭で紹介した「グローバル化」が、定義の最後の部分である“地球規模での統合、一体化される趨勢”であるとすれば、個性という花を咲かす根っこ、すなわち土台となる部分は目には見えないけれど地中に深く根を張っており、互いが強い繋がりをもって、力強く生育している姿、つまり相異なる個性がバラバラではなく共通の夢、目標、ビジョンに向かって、各々、役割を果たし、価値を発揮しつつ、協力し、たゆまず前進している一大調和体。こんなイメージが、グローバル社会のあるべき姿では、ないでしょうか?

つづく

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